デザイン思考ワークショップガイド

サービス開発チーム向け 対立を乗り越え共通認識を築くワークショップ手順

Tags: デザイン思考, ワークショップ, 合意形成, 対立解消, ファシリテーション

サービス開発チームにおける対立と共通認識の重要性

サービス開発の現場では、多様なバックグラウンドを持つチームメンバーが集まり、様々な視点からアイデアや課題について議論します。このような状況では、意見の対立や認識のずれが生じることは避けられません。しかし、これらの対立やずれを放置すると、議論が停滞したり、最終的な決定に全員が納得できなかったり、開発段階での手戻りが発生したりする原因となります。

デザイン思考ワークショップは、本来、多様な意見を歓迎し、そこから新たな視点や革新的なアイデアを生み出すための手法です。しかし、単にアイデアを出し合うだけでなく、チームとして共通の理解を持ち、建設的な対立を通じてより良い解決策に合意形成していくプロセスが不可欠です。強固な共通認識に基づいた合意形成は、チームの実行力を高め、開発の効率を向上させる上で極めて重要です。

この記事では、デザイン思考ワークショップのプロセスで生じやすい意見対立を建設的に乗り越え、チームとして強固な共通認識を築き、効果的な合意形成へと導くための具体的なワークショップ手順とファシリテーションのポイントを解説します。

なぜワークショップで意見対立や認識ずれが起きるのか

デザイン思考ワークショップは、未知の課題に対し、多様な視点からアプローチすることを奨励します。このプロセスそのものが、意見の対立や認識のずれを生む温床となります。

これらの要素は、革新的なアイデアの源泉となりうる一方で、適切に扱わなければチームの停滞や分断を招きます。

共通認識を築き合意形成するためのワークショップ手順

意見対立を建設的に扱い、共通認識に基づいた合意形成を目指すためのワークショップは、デザイン思考の各フェーズ(特に定義フェーズ後半や創造フェーズの絞り込み、テストフェーズの振り返りなど)に組み込むことが可能です。ここでは、汎用的な手順を紹介します。所要時間は議題の複雑さや参加人数によりますが、通常60分〜120分程度を見込むと良いでしょう。

事前準備

ワークショップ手順

ステップ1:課題と現状の共有(10-15分)

ワークショップの冒頭で、議論の対象となる課題と、現状の意見対立や認識のずれについて、ファシリテーターから簡潔に説明します。なぜこの議論が重要なのか、このワークショップを通じて何を目指すのかという目的を改めて共有します。

アクティビティ例:

ステップ2:意見の背景と根拠の探求(20-30分)

対立している意見や懸念に対し、単なる賛否ではなく、その意見の背景にある情報、経験、価値観、あるいは「なぜそう思うのか」という根拠を掘り下げます。一人ひとりの意見の「意図」や「前提」を理解することに焦点を当てます。

アクティビティ例:

ステップ3:共通点と相違点の明確化(15-20分)

出てきた多様な意見やその背景情報を整理し、チームとして共通している理解や価値観、そして具体的にどこが異なっているのか(対立の核心)を明確にします。これにより、議論の焦点を絞り込み、感情論ではなく具体的な論点に基づいた議論を促進します。

アクティビティ例:

ステップ4:新たな選択肢の創造(15-20分)

対立点を単なるどちらかを選ぶかの問題ではなく、両方の意見に含まれるポジティブな要素を取り入れたり、異なる角度からアプローチしたりすることで、第三の案やより包括的な解決策を創造します。既存の選択肢に固執せず、より良い解決策を共同で生み出すフェーズです。

アクティビティ例:

ステップ5:評価基準の設定と合意形成(15-20分)

創造された新たな選択肢を含む、検討対象となる解決策候補について、チームで共通の評価基準を合意します。その基準に基づき、各候補を評価し、最適な解決策や次に進むべき方向性を決定します。

アクティビティ例:

ステップ6:合意内容の確認と次のステップ(5分)

ワークショップで合意した内容(決定事項、見送り事項、検討が必要な宿題、合意された共通認識など)を簡潔にまとめ、参加者全員で確認します。誰が何をいつまでに行うか、という次の具体的なアクションプランを明確に共有し、ワークショップを終了します。合意内容は文書化し、後から参照できるようにします。

ファシリテーションのヒント

まとめ

サービス開発チームがデザイン思考ワークショップを通じて効果的に課題解決を進めるためには、意見対立を恐れず、それを建設的に扱い、チームとして強固な共通認識に基づいた合意形成を行うことが不可欠です。この記事で紹介した手順は、多様な意見の背景を深く理解し、共通点と相違点を明確にし、対立を乗り越える新しい選択肢を創造し、チームで合意した基準に基づいて最適な解を選択するための一例です。

これらの手順とファシリテーションのヒントを活用することで、チーム内のコミュニケーションを活性化し、認識のずれによる手戻りを減らし、全員が納得感を持って次の行動に移せるようになります。ぜひ、日々のチーム活動やワークショップに、これらのアプローチを取り入れてみてください。継続的に実践することで、チームのコラボレーション力と課題解決能力は向上していくでしょう。