デザイン思考ワークショップガイド

サービス開発チーム向け チームで顧客課題の共通認識を作るワークショップ手順

Tags: デザイン思考, ワークショップ, チームビルディング, 共通認識, 課題定義, サービス開発

はじめに

サービス開発において、チームメンバー間で顧客の抱える課題に対する認識が一致していることは極めて重要です。しかし、各自の経験や情報源の違いから、無意識のうちに課題認識にズレが生じていることは少なくありません。このような認識の不一致は、開発の手戻りや方向性のブレを引き起こし、結果として顧客にとって真に価値のあるサービス開発を妨げる要因となります。

本記事では、サービス開発チームが共通の顧客課題認識を持つためのワークショップ手順を解説します。このワークショップを通じて、チーム全体の課題理解を深め、効果的な解決策の検討に繋げることができます。

共通認識を持つことの重要性

なぜチームで顧客課題の共通認識を持つことが重要なのでしょうか。主に以下の理由が挙げられます。

ワークショップの目的と概要

このワークショップの目的は、チームメンバー個々の持つ顧客課題に関する情報、視点、解釈を共有し、議論を通じてチームとしての共通理解を醸成し、最終的に合意された「チームが取り組むべき顧客課題」を明確に定義することです。

デザイン思考のプロセスにおける「共感」フェーズや「定義」フェーズの一部と捉えることもできます。

所要時間は、参加者の人数や議論の深さにもよりますが、目安として2時間から3時間程度を想定します。オンラインでの実施も可能です。

参加者と必要な準備

参加者

必要な準備

ワークショップ手順

ワークショップは以下のステップで進行します。

ステップ1:各自の顧客課題認識を言語化・共有する(目安:30分)

まず、各参加者が事前に収集・経験した情報や、各自が考える顧客の課題を、付箋(またはオンラインホワイトボード上の付箋オブジェクト)に書き出します。

書き出した付箋をホワイトボードやオンラインツール上に貼り出し、一人ずつ簡単に内容を発表・共有します。全員が発表し終えたら、貼られた付箋全体を俯瞰します。

ステップ2:共有された認識間のギャップや共通点を見つける(目安:40分)

共有された様々な顧客課題の付箋を観察し、議論します。

付箋をグルーピングしたり、関連するものを線で結んだりしながら、チームとしての共通理解ができている部分と、認識にギャップがある部分を明らかにしていきます。特にギャップに注目し、「なぜこの違いが生まれるのだろう?」と問いかけます。

ステップ3:ギャップが生じた背景や原因を探求する(目安:30分)

前のステップで見つかった認識のギャップについて、その背景や原因を深掘りします。

このステップは、単に意見の相違を確認するだけでなく、お互いの視点や情報源を理解することを目的とします。「Why」を繰り返し問いかけることで、表面的な意見の対立ではなく、その根底にある情報の違いや解釈の仕方を探ります。

ステップ4:チームとして取り組むべき顧客課題を定義する(目安:40分)

共有された情報、発見されたギャップとその原因の探求を踏まえ、チームとして最も重要だと考える顧客課題、またはチームとしてまず取り組むべき顧客課題を定義します。

いくつかの候補となる課題を挙げ、議論し、優先順位をつける過程を経ることも有効です。全員の合意形成を目指し、なぜその課題に取り組むのか、その課題解決が顧客やサービスにどのような価値をもたらすのかを明確にします。

ステップ5:まとめと次のアクション確認(目安:10分)

定義した顧客課題を改めて全員で確認し、ワークショップで得られた気付きや学びを共有します。そして、この課題に対して次にとるべき具体的なアクションを確認します。

ワークショップのアウトプット(定義された課題、議論の内容、気付きなどが書かれたボード)を、チームメンバーがいつでも参照できる形で共有します。

ワークショップを成功させるためのヒント

まとめ

サービス開発チームが顧客課題に対する共通認識を持つことは、手戻りを減らし、効率を高め、真に価値あるサービスを生み出すために不可欠です。本記事で紹介したワークショップ手順は、チーム内の情報や視点を共有し、議論を通じて共通理解を深めるための具体的な方法を提供します。

このワークショップを実践することで、チームは同じ課題に向かって一丸となり、より効果的にサービス開発を進めることができるでしょう。ぜひチームで取り組んでみてください。ワークショップで得られた共通認識を基に、次のアイデア発想や解決策の具体化へと進んでいくことをお勧めします。