デザイン思考ワークショップガイド

サービス開発チーム向け 多様なアイデアをチームで合意形成しながら評価・選定するワークショップ手順

Tags: デザイン思考, ワークショップ, アイデア選定, チーム合意形成, アイデア評価

アイデア発想の次ステップ:チームで納得感を持ってアイデアを選定する重要性

デザイン思考ワークショップにおけるアイデア発想段階では、多様で斬新なアイデアを数多く生み出すことに焦点を当てます。しかし、多くのアイデアが出揃った後、「どのアイデアを次のプロトタイピングに進めるべきか」「チーム内で意見が割れる」「結局、一部の人の意見で決まってしまい、後の開発で手戻りが発生する」といった課題に直面することは少なくありません。

チームでアイデアを選定するプロセスにおいて、単に多数決で決めたり、リーダーが独断で決定したりすることは、チームメンバーのコミットメントを低下させ、後の開発段階での認識齟齬や手戻りの原因となり得ます。真に効果的な課題解決策を見つけ、チーム全体で推進していくためには、多様なアイデアの中から、チーム全員が納得し、合意形成された上で次に進めるアイデアを特定することが不可欠です。

この記事では、アイデア発想ワークショップの次に実施すべき、多様なアイデアをチームで合意形成しながら評価・選定するための具体的なワークショップ手順を解説します。本手順を実践することで、チームは自信を持って次のステップに進むことができるようになります。

アイデア評価・選定ワークショップの目的と効果

このワークショップの主な目的は、アイデア発想段階で生まれた多様なアイデアの中から、最も可能性の高いものをチームの合意形成を得ながら絞り込み、次のステップ(プロトタイピングや検証)に進むアイデアを明確にすることです。

期待される効果は以下の通りです。

ワークショップの準備

ワークショップを円滑に進めるために、以下の準備を行います。

具体的なワークショップ手順

Step 1: アイデアの整理と共有(15分〜30分)

アイデア発想ワークショップで出されたアイデアを一覧できるようにします。物理的な付箋の場合は壁やホワイトボードに貼り出し、オンラインツールの場合はツール上に全て表示します。

類似するアイデアがあれば、チームで話し合いながらグルーピングを行います。これにより、議論すべきアイデアの数を整理し、効率的に進めることができます。グループごとに代表者を決めて、そのアイデア群の概要を簡単に説明してもらいます。

Step 2: アイデア評価軸の設定(15分〜30分)

どのような基準でアイデアを評価するか、チームで合意形成を図ります。事前にいくつかの評価軸案を用意しておき、チームで議論して最終的な評価軸を決定するか、全くゼロからチームでブレインストーミングして決定する方法があります。

一般的な評価軸の例:

これらの評価軸の中から、今回のプロジェクトで最も重要視すべき軸を3〜5つ程度選びます。各評価軸の定義について、チーム全員が共通の理解を持てるように具体的に話し合います。例えば、「実現可能性」が高いとは具体的にどういう状態か、などを明確にします。

Step 3: 個別アイデアの評価(30分〜60分)

設定した評価軸に基づき、各アイデアを評価していきます。評価方法はいくつかありますが、代表的なものとして以下が挙げられます。

  1. 投票: 各評価軸について、参加者それぞれが最も良いと思うアイデアに複数票(例: 3票)を投じる。または、アイデア全体の中から「次に進めたいアイデア」に投票する。
    • ツール活用: オンラインホワイトボードの投票機能が便利です。匿名投票に設定することも可能です。
  2. スコアリング: 各評価軸に対して、それぞれのアイデアを5段階などで評価し、合計スコアで比較する。
    • ツール活用: オンラインホワイトボード上にマトリクス(アイデア × 評価軸)を作成し、評価を記入するスペースを用意します。スプレッドシートなどを併用するのも有効です。
  3. 議論と評価: 各アイデアについて、評価軸ごとにチームで議論し、定性的に評価を記録する。評価軸ごとのメリット・デメリットや懸念点を洗い出す。

これらの方法を組み合わせて使用することも可能です。例えば、まず投票で候補アイデアを絞り込み、その後、絞り込まれたアイデアについてスコアリングや議論で深く評価する、といった進め方です。

Step 4: 優先順位付けと絞り込み(15分〜30分)

評価結果(投票数、スコア、議論内容)をチーム全体で共有します。評価の高かったアイデアや、議論を通じてチームの関心が高まったアイデアをリストアップします。

リストアップされたアイデアの中から、次のステップ(プロトタイピングなど)に進めるアイデアを数個(例: 1〜3個)に絞り込みます。この際、評価結果だけでなく、プロジェクトの現状やチームのリソース、リスクなども考慮に入れる必要があります。

評価結果を視覚化するために、2軸マトリクス(例: 顧客価値 vs 実現可能性)などを用いると、アイデアの位置づけが分かりやすくなります。

Step 5: 選定アイデアに関する合意形成(15分〜30分)

絞り込まれたアイデアについて、なぜそのアイデアを選んだのか、他のアイデアを選ばなかったのはなぜか、チーム全体で改めて議論し、納得感を醸成します。

選定されたアイデアについて、ポジティブな側面だけでなく、懸念される点やリスクについても正直に話し合います。これらの懸念点をどのようにクリアしていくか、簡単なアクションプランを議論することも有効です。

チームメンバー全員が、選定されたアイデアについて「これなら次に進めてみよう」と納得できる状態を目指します。もし、どうしても意見がまとまらない場合は、一旦持ち帰って追加の情報収集を行ったり、評価軸自体を見直したりすることも検討します。合意形成は、単なる多数決ではなく、チームとして「最善の選択をした」という納得感を共有することに重点を置きます。

ワークショップを成功させるためのヒント

まとめ

多様なアイデアの中から、チーム全体が納得し、次に進めるアイデアを選定するプロセスは、サービス開発の成功にとって非常に重要です。今回ご紹介したワークショップ手順は、チームの共通認識を高め、合意形成を促し、後工程での手戻りを減らすことに繋がります。

アイデア発想ワークショップで生まれた貴重なアイデアを「宝の持ち腐れ」にしないためにも、ぜひチームでこの選定ワークショップを実践してみてください。明確な評価軸に基づき、チームで議論し、納得感を共有しながら次のステップに進む経験は、チームのエンゲージメントを高め、より良いサービス開発に繋がるはずです。

本記事で解説した手順を参考に、チームの状況に合わせてアレンジしながら実施してください。オンラインホワイトボードツールを活用することで、リモート環境でも円滑にワークショップを進めることが可能です。