デザイン思考ワークショップガイド

サービス開発チーム向け 顧客の「本当の姿」をチームで共有するペルソナ作成ワークショップ手順

Tags: ペルソナ作成, ワークショップ, 顧客理解, チームビルディング, サービス開発

サービス開発における顧客理解の重要性

サービス開発において、顧客のニーズや課題を正確に把握することは、成功の鍵となります。しかし、チーム内で顧客像に対する共通認識がない場合、それぞれの立場で異なる顧客を想定してしまい、開発の方向性がぶれたり、ユーザーにとって本当に価値のある機能を見落としてしまったりする可能性があります。これにより、手戻りが発生したり、開発したサービスが顧客の期待に応えられないといった課題に直面することがあります。

このような課題を解決し、チーム全体で一貫した顧客視点を持つための有効な手段の一つが「ペルソナ」の作成です。ペルソナとは、ターゲットとなる顧客の典型的な人物像を具体的に描いたものです。属性だけでなく、行動、思考、感情、ニーズ、課題などを詳細に設定することで、チームはあたかも実在する人物であるかのように顧客を理解し、共感することができます。

この記事では、サービス開発チームが顧客の「本当の姿」を共有し、共通認識を築くためのペルソナ作成ワークショップの具体的な手順と進め方について解説します。すぐにチームで実践できるよう、必要な準備、各ステップでの具体的な作業内容、ツール活用法、そしてワークショップを成功させるためのポイントをご紹介します。

ペルソナ作成ワークショップの目的

このワークショップの主な目的は、以下の通りです。

ワークショップ実施のための準備

ワークショップを始める前に、以下の準備をしっかりと行いましょう。

1. 目的とゴールの設定

ワークショップを通じて何を目指すのか(例: 特定のターゲット顧客層のペルソナを作成する、既存顧客の行動パターンを分析する等)を明確にし、参加者に共有します。

2. 参加者の選定

サービス開発チームのメンバーを中心に、企画、開発、デザイン、マーケティングなど、多様な視点を持つ担当者を選定します。5〜8名程度の少人数で行うのが効果的です。

3. 事前情報の収集と共有

ペルソナ作成の基盤となる情報を用意します。可能な限り、データに基づいた情報収集を心がけましょう。

これらの情報は、ワークショップ開始前に参加者に共有しておくと、よりスムーズに進行できます。情報が十分にない場合は、既存の知見や仮説からスタートし、ワークショップを通じて明確になった「仮説としてのペルソナ」を今後検証していくというアプローチも可能です。

4. 必要なツールと資料の準備

オンラインまたはオフラインでの実施形態に合わせてツールを準備します。

5. 時間と場所の確保

ワークショップの時間は、作成するペルソナの数や情報の量によりますが、2時間から半日程度を見積もっておくと良いでしょう。集中できる環境を確保します。

ペルソナ作成ワークショップの手順

ここでは、一般的なペルソナ作成ワークショップの手順をご紹介します。時間は目安であり、チームの状況に応じて調整してください。

ステップ1:導入・目的共有(10分)

ステップ2:既存情報とインサイトの共有・抽出(30分)

ステップ3:顧客属性の書き出しと共通点・相違点の整理(30分)

ステップ4:行動・思考・感情・欲求・課題の深掘り(45分)

ステップ5:ペルソナの具体化とネーミング(20分)

ステップ6:ペルソナの発表とフィードバック(15分)

ステップ7:今後の活用方法の確認(10分)

ツール活用例(Miro/Figma FigJamの場合)

オンラインホワイトボードツール(Miroなど)を活用すると、リモートワーク環境でも効率的にペルソナ作成ワークショップを進めることができます。

  1. ワークショップボードの準備: あらかじめ、ワークショップの手順に沿ったフレームワーク(領域)を作成しておきます。例えば、「導入」「情報共有」「属性出し」「行動・思考・感情」「ペルソナシート」「発表・フィードバック」といったエリアを設けます。
  2. ペルソナテンプレートの配置: ステップ5で使用するペルソナシートのテンプレートをボード上に配置しておきます。Miroなどには標準でテンプレートが用意されていることが多いです。
  3. 情報・インサイトの貼り付け: ステップ2で抽出したインサイトや収集した情報を付箋としてボード上に貼り付けていきます。色分けやタグ付けを活用すると整理しやすくなります。
  4. 属性情報の書き出し: ステップ3で考えた属性情報を付箋で書き出し、関連するものを近くに配置したり、グルーピングしたりします。
  5. 共感マップの活用: ステップ4の深掘りには、Empathy Mapのテンプレートをボード上に配置し、それぞれの項目(Says, Thinks, Does, Feels, Pains, Gains)に付箋を貼り付けていくのが効果的です。
  6. ペルソナシートへの集約: ステップ5で、ボード上に散らばった情報を参照しながら、ペルソナシートテンプレートに情報を集約・記述していきます。
  7. 共同編集と議論: 参加者全員がリアルタイムでボードを共同編集できます。カーソル表示やコメント機能を使えば、離れていても円滑に議論を進められます。
  8. 完成したペルソナのエクスポート: 完成したペルソナシートを含むボード全体、または特定のフレームを画像やPDFとしてエクスポートし、チームメンバーに共有します。

ワークショップを成功させるためのポイント

まとめ

ペルソナ作成ワークショップは、サービス開発チームが顧客に対する深い共感を持ち、共通の視点からサービスを開発するための強力な手段です。本記事でご紹介した手順とポイントを参考に、ぜひチームで実践してみてください。

ワークショップを通じてチームで共有した顧客の「本当の姿」は、アイデア創出、機能の優先順位付け、デザイン判断など、その後のあらゆる開発プロセスにおいて、明確な指針となります。これにより、手戻りを減らし、より顧客のニーズに合致したサービスを生み出すことに繋がるでしょう。

作成したペルソナを元に、次のステップとしてカスタマージャーニーマップを作成するワークショップに進むと、さらに具体的な顧客体験のデザインに役立てることができます。